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一般社団法人 日本経済団体連合会が2018年に発表したアンケート調査結果によると、企業が選考にあたって特に重視した点として、82%もの企業が、「コミュニケーション能力」と回答している事が分かりました。
また、帝国データバンクが2022年に発表した「企業が求める人材増に」関するアンケート結果でも、採用活動においてどのような人材を求めているかの質問に対して(3つまで複数回答)、「コミュニケーション能力が高い」が最も多い42.3%を示し、「意欲的である」(42.4%)がそれに続きました。
以上のデータが示す通り、新卒採用の現場において「コミュニケーション能力」は最も高く評価される強みです。「コミュニケーション能力なら自分もアピールしやすい!」と考える人もいることでしょう。
その一方で、自己PRの際に「どうすればコミュニケーション能力をうまく自分の強みとして伝えればよいか、方法がわからない」という人も少なくないのではないでしょうか。
そこで、自己PRであなたのコミュニケーション能力がより企業の採用担当者の心に刺さり、効果的に伝わる方法について解説します。
コミュニケーション能力のアピールで押さえておきたいこと
もしかしたら、「誰とでも話せる」という点を根拠に、自分のコミュニケーション能力をアピールできると考えていないでしょうか。
確かに、誰とでもコミュニケーションできるのは素晴らしい特徴です。しかし、その点をただただ強調したところで、「コミュニケーション能力が高い」という評価につながるとは限りません。
そこで、コミュニケーション能力を自己PRでアピールする前に、これだけは押さえておいてほしい2つのポイントを解説します。
企業に貢献できると感じられなければ評価されない
そもそも自己PRとは、自分の強みや資質、能力などが企業で活かせることをアピールすることです。
自己PRを通じて、企業は就活生の人柄や強みなどを把握し、自社にマッチした人物か、自社が求める能力を持っているか、長く活躍してくれる人材かどうかなどを見極めようとします。
そのため、自己PRでは「仕事で役立つ」「会社に貢献できる」強みや資質・能力であることをアピールしなければ、評価につながりません。
その意味で、コミュニケーション能力は、仕事を円滑に進めるための手段であることを念頭に置き、その能力で何ができるか、仕事にどう活かせるかを考えてアピールするようにしましょう。
たとえば、「報告・連絡・相談を密にとり合い、チームの連携をスムーズにおこなえる」「顧客との認識のギャップにいち早く気づき、誤解を解いてすばやく軌道修正できる」などといった表現が必要です。
確かに「コミュニケーション能力がある」のはあなたの長所かもしれませんが、ただその点をアピールしたところで、必ずしも企業側に伝わるとは限らないのを覚えておきましょう。
「誰とでも話せる」「人とすぐに仲良くなれる」だけではNG
前述のとおり、コミュニケーション能力をアピールする際は、「誰とでも話せる」「人とすぐに仲良くなれる」という表現では、評価につながりません。
「誰とでも話せる」「人とすぐに仲良くなれる」というアピールだけでは、仕事にプラスの影響を与えることがわからないからです。誰とでも話せることが売上にはなりません。
とはいえ、もちろん「誰とでも話せる」ということは売上につながる強みであることは間違いありません。だからこそ入社してから仕事に活かせると感じてもらえるよう、表現を工夫するのが重要なのです。
企業はどんなコミュニケーションを求めているのか把握しよう
では、企業から求められているコミュニケーション能力とは、いったい何でしょうか。
仕事に活きるコミュニケーション能力とはどのようなものなのでしょうか。
企業が求めるコミュニケーション能力とは何かを、いくつかのポイントで解説していきます。自分のコミュニケーション能力をより「刺さる」かたちで伝えるためのヒントが掴めるでしょう。
論理的に説明する力
これは情報を整理して伝達する力です。たとえば複雑でわかりづらい事柄があっても、順序よく筋道を立てて丁寧に説明すれば、聞き手も根本を理解して全体像を把握できます。
こうした論理的に説明する能力は、仕事上の多くの場面で役立ちます。
たとえば、顧客向けのプレゼンテーションや、取引先との交渉などをおこなう際に、複雑な事柄でも「なぜ」「だれが」「どこで」などを明確にし、順序立てて伝えることができます。
ただ「話す」ことが得意というのではなく、相手が理解できるように話すことが企業に求められているコミュニケーション能力なのです。
相手の問いに的確に答える
相手から受けた疑問に対し、わかりやすく的を射た回答をすることもコミュニケーション能力があるといえます。的確な回答であれば質問者も納得するので、以後のやりとりを円滑かつ効率的に進められるうえで、必要不可欠なコミュニケーション能力です。
仕事をしていると、たとえば顧客から商品やサービスに関する質問やクレームが来る、プレゼン中に取引先から質問を受けるなど、回答を求められるケースが多々あります。
的確な答えを返すことで、相手に必要な情報を提供して助けたり、納得させて気持ちを落ち着かせたりなど、物事をプラスの方向にもっていけます。
良好なチームワークを維持する
特殊なケースを除き、たいていの業務は他の社員との協力や連携のもとで遂行するものです。
コミュニケーション能力があれば、自分が所属する部門や部署、プロジェクトチームなどの中で、他のメンバーとの間で円滑な意思疎通を通じて情報を交換し合い、相互に助け合うことが可能です。
たとえば、チームメイトの悩みや意見を引き出したり、時には自分からも提案したり、誤解や軋轢が生じても直ちに修復に向けて行動を起こせるなど、コミュニケーションを通じて対処し、良好なチームワークを維持できます。
仕事において欠かせないチーム構築において活きるために、このコミュニケーション能力が求められるのです。
相手のニーズや希望をくみ取る
仕事とは、基本的に社会や顧客の課題を解決していくもの。コミュニケーション能力があれば、相手が抱えているニーズや希望を汲み取り、それに対して適切な対応を講じることができます。
仕事において、こうした相手のニーズ・希望を汲み取るコミュニケーション能力は欠かせません。
たとえば顧客とのやりとりの中で、相手の隠れた不満や本音を推察し、的を射た質問で真のニーズを引き出せたりすることで、関係改善をはかったり、ビジネス機会の創出につなげたりすることが可能なのです。
人に対する気遣いができる
コミュニケーションにおける「会話がうまい」「聞き上手」などの長所は、あくまで表面的な部分。
本質的に重要なのは「どれだけ相手の立場に立てるか」です。相手の立場に立って物事を考えられれば、その人が今どう感じているか、何を考えているかを読み取り、適切な気遣いができます。
仕事の現場では、こうした他者への気遣いができる人材が求められています。相手の状況や気持ちの変化などを敏感に感じ取り、その場、その相手ごとに適した気遣いができます。
顧客への的確な気配りを通じて、信頼構築や満足度向上につなげることも可能です。話すことだけがコミュニケーションではありません。
相手のことを気遣い、周囲が気持ちよく過ごせるようにできることもコミュニケーションの一環であり、必ず複数人がかかわる仕事において必要なのです。
コミュニケーション能力の自己PR方法
ここまでで、企業では具体的にどのようなコミュニケーション能力が求められているかを解説しました。次に気になるのが、「どうしたら自分のコミュニケーション能力を、企業にとって役立つ能力としてアピールできるか」というポイントです。
自己PRでコミュニケーション能力を効果的にアピールする方法を、3つのステップで解説します。
①まずはコミュニケーション能力があることを述べる
まずは自己PRの冒頭で、自分の強み・長所はコミュニケーション能力であることを述べます。何事も冒頭で結論を述べれば、最も大事なポイントを忘れずに伝えられます。
あとはなぜその結論なのかを補足する流れになるので、話す側も説明しやすく、聞き手も内容を理解しやすいのがメリットです。何より、結論から伝えることはビジネスにおける基本の作法なので、仕事で活かせるコミュニケーション能力を備えているというアピールにもつながります。
②それを裏付ける具体的な経験を述べる
自己PRで次に伝えるのは、なぜコミュニケーション能力が自分の長所・強みなのかという結論を裏付けるための具体的な経験です。具体的な経験が伴わなければ、アピールの内容が抽象的すぎて、自分が持つコミュニケーション能力の素晴らしさが相手にはうまく伝わりません。
では、コミュニケーション能力をアピールするのに、どのようなエピソードであれば適切なのでしょうか。何か華々しい体験談を…と身構えてしまいそうですが、あくまでこれまでの実体験に基づくもので十分です。普段からの継続的な習慣でも、一度限りの体験談でも構いません。
ただし、あくまでも「仕事でも活かせる」という印象につなげるのがポイントです。
- 部活で仲間内でのコミュニケーションを大切にし、活発に意見交換し合える雰囲気づくりに努めた
- バイト先で困っていたお客さんとのやりとりを通じて問題を発見し、解決につなげた
- バイト先で業務にも影響が出るほど関係が悪化していた先輩と後輩の間に入り、修復を図った
などなど、日々の生活で思い当たる体験を掘り起こし、エピソードとして組み立てましょう。
その際、具体的に「どうやってコミュニケーションをとったのか?どんな工夫をしたのか?を伝えれば、採用担当があなたのコミュニケーション能力をイメージしやすくなります。
③仕事での活かし方を述べる
次に、自分のコミュニケーション能力が、入社後に仕事でどう活かされるかを述べて話をまとめます。
あくまでも自己をPRするものですから、採用担当者が「このコミュニケーション能力は自社の役に立つ」と思えるような内容にすることが大切です。
「周囲と協調できる」「顧客と良い関係を築ける」「売上への貢献が期待できる」など、入社後も活躍できる人材という評価につながり、内定獲得の可能性が高まります。
したがって、「コミュニケーション能力は、貴社の業務で〜という形で活かせる」というところまで、しっかり自己PRをする必要があります。
たとえば、コミュニケーションを通じて相手のニーズや気持ちを的確に汲み取れる能力があれば、入社後も顧客との信頼関係促進に役立ち、満足度向上・売上増加に繋げられる、などといったかたちです。
自分の入社が企業にどれだけの可能性をもたらすか、具体的に言及してアピールするのが重要です。
【応用編】コミュニケーション能力は言い換えて伝えるとより良い
『コミュニケーション能力』という言葉はやや抽象的です。これまで解説してきた通り、コミュニケーション能力と一口に言っても、その力には実はさまざまな種類があります。
意思伝達力が優れているのか、気遣いが優れているのか、傾聴力が優れているのか…この言葉からはわかりません。そのため、「コミュニケーション能力があります」とだけ伝えるのでは、あなたの強みが正しく相手に届きにくくなります。
あなたの「コミュニケーション能力」を的確に表現できるキャッチフレーズを見つけてください。
たとえば、「相手の懐に飛び込んでいく力」「適切な気遣いで相手の心を開かせる力」「きめ細やかな意思疎通でチームの一致を高める力」「理路整然とした説明で相手を納得させる力」「複雑な物事をわかりやすく相手に伝える力」など、あなたのコミュニケーション能力を上手く表現できるワードを探しましょう。
的確なキャッチフレーズが見つかれば「コミュニケーション能力があります」というアピールよりも、ずっと印象に残る自己PRになるでしょう。
自己PRで忍耐力をアピールするコツ|採用担当者目線での評価ポイント付き
自己PR(コミュニケーション能力)の例文
次に、コミュニケーション能力のタイプごとに、具体的な自己PRの例文を紹介します。自分のコミュニケーション能力をアピールする自己PR内容を組み立てるために、ぜひご参照ください。
「論理的に説明する力」の場合
私は、物事を筋道を立ててわかりやすく説明できることを、自分の強みだと思っています。
アルバイトで家庭教師をしていると、数学や理科などで、生徒に難しい用語や概念の意味を質問されることが多々あります。
その際、教科書や参考書の説明をそのまま使うことはせず、まず、生徒がどの程度まで理解しているかを確認し、その理解度に基づいて、順序立てて解説します。
一度で納得してもらえることもあれば、そうでない場合は疑問をそのままにしておかず、図解などを用いて、より噛み砕いて説明するよう努めます。
疑問が解消されれば、実際に試験に出ても正答を導き出せるようになるので、生徒の役に立っていると感じています。
入社したら、この説明能力を生かして、たとえば理解不足が原因で発生しているミスコミュニケーションやクレームなどを解決に導くなど、仕事に役立てられるものと考えます。
エピソードを通じて、複雑な物事をわかりやすく説明できる能力のイメージが具体的に伝わってきます。
例えば上司がポイントを掴めるよう状況お報告したり、お客様にサービス内容をわかりやすく説明したりなど、仕事場で大変重宝されるスキルです。
相手が理解できるまでじっくり待つという忍耐力のアピールにもつながっているので、好印象を与えられるでしょう。
「良好なチームワークを維持する力」の場合
私は、密なコミュニケーションで良好なチームワークを維持できることが強みです。
大学でバレーボール部のキャプテンをしていました。
部内には、練習に対する姿勢やアルバイトとの優先順位などの差で衝突する部員たちがいました。
そこで、部員たちに聞き取りをおこなったうえで、「相互を理解してチーム目標をつくる」ことを目的とした話し合いの場を設けもしました。
互いのことを理解し合えるようになっただけでなく、チームとしてみんなが同じ目標に向かい練習に励めるきっかけになったと思います。
知らないことが原因で生まれた軋轢ならば、コミュニケーションさえとれれば解消できるのだと感じました。
社会に出て仕事に就いた際も、お互いの背景や状況をまずは理解して物事を進め、目標を達成していく姿勢を忘れないようにしたいと考えています。
この例文では、コミュニケーションをとることの重要性について触れています。
自分が動くだけでなく、他の部員にも働きかけてコミュニケーションを促している点がコミュニケーション能力として評価できます。
「顧客のニーズを的確に把握する力」の場合
私はお客様のニーズを的確に把握する力に長けていると自負しています。
家電量販店でアルバイトをしていたとき、「はじめに予算の話はしない」という自分なりのルールを設けて接客をしました。
それは、予算を第一に考えてしまうと、視野が狭まってニーズに合った品物を見落とす危険性があると考えたからです。
まずはお客様の希望を聞いて、そこから絶対に譲れない条件を洗い出し、最終的に予算の範囲内でニーズに合ったものを探すようにしていました。
このやり方が功を奏したのか、エリアマネージャーから奨励賞をいただくことができました。
御社に入社した際にはこの能力を業務で活かし、取引先のお客様のニーズを汲み取って的確な提案に繋げ、売上の向上に貢献していきたいと考えます。
この例文では「どうすれば顧客のニーズを引き出せるか」という点に重きを置いてコミュニケーションをとっていた経験について述べています。
質問の順番や言葉の選び方によって、引き出せる情報は変わります。
それを知り、実際に活かすことができた経験は、貴重なものとなるでしょう。
「相手の問いに的確に答える力」の場合
私は相手の問いに的確に答える力が強みです。
ガス関係のコールセンターでアルバイトをしていますが、現場ではいかに的確な回答をしてお客様に納得させ、短時間で対応を終了できるかに重きを置いた指導を受けています。
例えば『予約した時間帯になっても修理にこない』などの問い合わせはよくありますが、この場合、ただ謝るだけではお客様の気持ちは収まりません。
予約を受ける際は「午後1時から3時の間」などと長めに時間を取っているので、「遅れた」と言われても、実際にはその時間帯終了まであと30分から1時間ほど残っている場合が多々あります。
「あともうしばらくお待ちいただけますでしょうか。こちらからも担当に連絡して折り返しさせていただきます」とお答えしていったん電話を切ります。
その後、担当者に電話して、何時ごろに到着できるかを確認し、お客様に折り返して到着時間をお伝えすれば、たいていは納得して話が収まります。
アルバイトで培った、相手の問いに的確に答える力は、入社後もお客様から質問を受けるなどの場面で、スピーディーに物事を収拾して業務効率化に貢献する意味で、大いに活かされると考えます。
エピソードから、実際の仕事を通じて培ったコミュニケーション能力であることが伝わるので、説得力があります。
仕事場では、社内の人間からにしろ、取引先にしろ、相手が納得できるよう的確な答えを求められることが多いので、入社後も活躍できる人材という評価につながるでしょう。
「人に対する気遣いができる力」の場合
私は人に対する気遣いができる力に長けていると思います。
幼い頃から親に「人の気持ちに立って物を考えなさい」と言い聞かされながら育ってきた環境によるものと考えます。
学生時代は中華料理店でアルバイトをしていましたが、メニュー選びに困っているお客様には「これが美味しいですよ」などとアドバイスし、後で「美味しかった、ありがとう」と感謝の言葉を頂きました。
疲れているバイト仲間には「あとは自分がやっておくから早めに上がったら?」と声をかけるなどして、心配りに努めました。
1年程度のアルバイトでしたが良好な人間関係が築け、お客様にも顔を覚えて声をかけていただけるなど、充実した日々を過ごせたと思います。
入社後も相手を気遣う心を大切にし、お客様の立場に立って物事を理解して的確なサポートに繋げ、満足度の高いサービスを提供していきたいと思います。
ごく日常的な内容のエピソードですが、気遣いや配慮ができる人柄がよく伝わってきます。
相手の立場に立って物事を考え、気遣いができる力は、社外はもちろん、社内でも良好な人間関係やチームワークを構築するなどの点でも重要視されるので、入社後も活躍できる人材として評価してもらえるでしょう。
コミュニケーション能力は言い換えも可能だがアピール内容に注意が必要
コミュニケーション能力は社会においても求められるものであり、自己PRでアピールするのには非常に向いています。
その反面、企業は「誰とでも話せる」「話を聞くのがうまい」人を採用したいわけではありません。企業が採用したい人材は、あくまで企業に利益をもたらしてくれる人材です。コミュニケーション能力が企業に役立つことを示せなければ評価とはならないでしょう。
加えてコミュニケーション能力とは抽象的で中身が伝わりにくい言葉でもあります。
これらの理由から、自己PRでコミュニケーション能力をアピールする際は「論理的に説明できる」や「相手のニーズをくみ取れる」などのように、自分のコミュニケーション能力がどんなものかを的確に表現することが欠かせません。
自己PRでアピールする際は、具体的にどのようなコミュニケーション能力を、どのように企業で活かすのかを意識して伝えてください。
自分の強みは本当に「コミュニケーション能力」なのか、自己分析ツールで確認しよう
『コミュニケーション能力』を自己PRする人の中には、自分の強みを勘違いしている人もいます。強みを勘違いしていると自己PRは上手くいきません。
自分の本当の強みを見極めるには、自己分析ツール「My analytics」が便利です。36の質問に答えるだけで、あなたの強み・弱み→それに基づく適職をサクッと診断できます。
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