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就活の開始時期が8月開始になり、10月に内定式。就活期間が短くなったので、内定式までに内定辞退の決断ができず、内定式後に内定辞退をしたくなる時があると思います。
でも、「内定式後の辞退なんて可能なのか?」「内定式後の内定辞退は損害賠償を請求されそうで怖い…」と心配ではありませんか?
そこで、内定式後の内定辞退は可能なのかを、法律的に検証していきたいと思います。
内定式後の内定辞退は可能です
結論から先に言うと、内定式後の内定辞退は可能です。法律的には何の問題もありません。なぜか。内定契約とは「双方が途中で解消していい契約」だからです。
したがって、内定式の後であっても、内定辞退しても何の問題もありません。
内定契約は「双方が途中で解消していい契約」
内定契約の法的な性格とは何か。最高裁の判例によれば、「双方が解約権を持つ始期つきの労働契約」です。
難しいですよね。簡単に言いえば、『ある期限(4月1日)から働くという契約だが、企業・学生側の双方が契約をキャンセルすることができる』というものです。」
立場の強い企業側からの解約には強い制約があります。が、立場の弱い労働者からの解約は自由にできます。
入社2週間前までの辞退なら法律的に問題はない
内定式後の内定辞退は法律的に何の問題もありません。特別な理由もいりません。なぜなら、労働者側は自由に契約を解除できるからです。民法によれば、
契約期間の定めのない労働契約とはいわゆる「正社員雇用」の労働契約です(派遣は期間の定めのある労働契約)
この労働契約は、「二週間の予告期間(解除する前に「解除するよ」と相手に予告し、相手が準備をするための期間)」を置けば、特段の理由を必要とせずに、解除できるのです。
だから、内定式後であっても、働き始める2週間前までなら、内定辞退は可能です。
ということで、内定式後の内定辞退は、労働者である、就活生の自由です。
損害賠償の心配もない
先ほど、「一方的に解除できる」と書きましたね。解除とは、法律的に言えば「最初からそんな契約がなかったものとして扱う」ということです。
「最初からなかったもの」として扱うわけですから、その契約を根拠とした損害賠償もできなくなるのです。
したがって、内定式後の内定辞退をしても、損害賠償を請求されることはありません。ブラック企業の場合、脅しとして損害賠償を請求してくるかもしれませんが、法的な根拠はないので、無視してもOKです。
法的な拘束力は何もない
内定を受ける際、「内定承諾書」という書面を取り交わすため、「内定辞退をすると何かの法律に違反するのでは…」と考える人もいるかもしれませんが、実際は内定辞退が法律違反になったり、罰金や罰則が発生するものではありませんので安心してください。
繰り返しになりますが、内定契約は「双方が途中で解消して良い契約」です。内定を受ける側にとって、内定辞退は当然の権利ですので、「辞退をしたいけど、罰則があるかもしれないから辞退できない…」と悩む必要はありません。
なお、入社の2週間前をきってからの内定辞退については、法律に触れる可能性があるため、注意が必要です。内定辞退をしようと決めた場合は、言い出しにくいからといってずるずると先送りにせず、早めに先方へ伝えるようにしましょう。
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就職に成功するためには、まず自分の就活力を知っておく必要があります。就活力とは、就活で必要な準備や企業側が重視しているポイントに対して、どれだけ備えているかをはかる指標です。
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内定後の内定辞退からトラブルを生まないために
これまで述べてきたように、内定後であっても内定辞退は可能です。また、損害賠償等を請求されることもありません。
内定式後の内定辞退はとても迷惑がかかる
しかし、内定式後の内定辞退が先方に迷惑をかけるのも事実です。内定式後に辞退をされると、人数を補填することもできず、採用計画が狂います。だから、内定式後の辞退は相手にとても迷惑をかける行為なのです。
企業によっては「内定式後に辞退をするなんて、おたくの学生は何を考えているんだ」と就職課にクレームを入れる可能性もあります。
だから、内定式後の内定辞退は出来るだけ丁重に辞退し、トラブルを起こさないように心がけなければなりません。
辞退の意志があればすぐ辞退連絡を
一度内定を承諾すると、企業から諸々の手続きや、内定期間中の研修の話など、様々な連絡が来ることがあります。先方は当然、自社へ入社するものだと思って話を進めていますので、そんな中での内定辞退の連絡は、なかなか言い出しにくいのではないでしょうか。
しかし、言い出しにくいことだからといって先延ばしにしていても、何もいいことはありません。時間が経てば経つほど、先方も入社に向けての準備を着々と進めてしまいますので、辞退をすると決めたら、すぐに先方へ連絡するようにしましょう。
間違っても、内定式や入社式にドタキャンをしたりすることのないようにしてください。そのような態度を取ってしまうと、最悪の場合、今後はあなたの出身大学の学生は誰も採用しない…という事態にもなりかねません。先輩として、自分のわがままで後輩たちに迷惑をかけることのないようにしましょう。
電話でまずは口頭謝罪しよう
まずは、電話で口頭謝罪をしましょう。メールで連絡する方法もありますが、丁重に辞退をしたい場合は、電話で直接謝罪をするのがベターでしょう。
電話をした際に、「直接お詫びにこい」と言われることもあるでしょう。相手に迷惑をかけているのは事実ですから、素直に直接お詫びに行きましょう。
電話による内定辞退の方法については、こちらの記事をご参照下さい。会話例付きで、スムーズな内定辞退の方法を解説しています。
電話での内定辞退の謝罪例文
お世話になっております。私、○○大学の○○と申します。恐れ入りますが、人事部の○○様をお願いできますでしょうか?
ーはい、○○です。
お世話になっております。先日、内定の通知をいただきました、○○大学の○○と申します。○○様、ただ今、少々お時間よろしいでしょうか。
ーはい、どうしました?
ありがとうございます。先日は内定の通知をいただき、大変感謝しております。せっかく内定をいただいておきながら、身勝手なお願いで誠に申し訳ないのですが、本日は御社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡致しました。
ーそうですか。残念です。差し支えなければ、理由を伺えますか?
はい。他に応募していた企業がありまして、今回そちらからも内定をいただきました。自身の適性などを真剣に考えました結果、そちらの企業とのご縁を感じ、このような決断をした次第でございます。
ーそうでしたか。残念ではありますが、承知いたしました。
お忙しい中、お時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした。本来なら、直接お伺いするべきところを、お電話でのご連絡になってしまい申し訳ありません。
ーいえいえ、大丈夫ですよ。別の企業でも頑張ってくださいね。
ありがとうございます。貴重なお時間を頂戴しながら、このような形となってしまい、大変ご迷惑をおかけいたしました。それでは、失礼いたします。
手紙で改めてお詫びすること
ビジネスでの丁重な謝罪は「口頭で直接謝罪。後に、手紙で再度謝罪する」のがベストなやり方です。内定式後の内定辞退は相手にとても迷惑をかける行為ですから、手紙で丁重に謝罪をするべきです。
手紙による内定辞退をするときの謝罪文の書き方はこちらの記事をご参照ください。
手紙の書き方例
拝啓 〇〇の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
この度は、内定のご連絡を頂き、誠にありがとうございました。お電話でもすでにご連絡させていただきましたが、自身の適正を考慮し、誠に勝手ではございますが、貴社の内定を辞退させていただきます。
貴重なお時間を割いていただいたにもかかわらず、このような形となりましたことを、心よりお詫び申し上げます。
末筆ではございますが、貴社のますますのご発展と、社員の皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
敬具
令和〇〇年〇月〇日
〇〇大学〇〇学部〇〇専攻 〇〇〇〇
企業が威圧的な態度をとってきても大丈夫
企業によっては、内定辞退の連絡をした際に大声で非難したり、直接会社まで説明しに来るように強要して、内定を辞退させないようにするといったことがあるかもしれません。
しかし、学生には職業選択の自由があり、内定辞退も内定を受ける側として当然与えられるべき権利です。たとえ、先方の担当者から「辞退するなら損害賠償を請求する」などといって不安を煽られたり、「研修の日程を決めてしまったから今更内定辞退は了承できない」などと言われたとしても、罰金や罰則を受けることなく辞退できますので安心してください。
もし、どうしても先方に受け入れてもらえない場合は、「内定の辞退申入書」を発送すれば問題ありません。その際、万が一裁判などになってしまった場合に「そんなもの受け取っていない」と言われてしまうといけないので、辞退申込書が確実に発送されたことを証明する「内容証明郵便」にて発送することをおすすめします。
あまりに威圧的な態度なら学校に相談を
企業に内定辞退を受け入れてもらえず、威圧的な態度を取られた場合は「内定の辞退申入書」を発送すれば問題ありません。
しかし、企業によっては執拗に連絡をしてきたり、威圧的な態度をとり続ける可能性もあります。あまりにもひどいようであれば、一度学校の就職サポートセンター等へ相談してみることをおすすめします。万が一、内定辞退を理由に訴訟を起こされた場合、学生一人きりで対応することはあまりにも大変ですので、事情を説明して学校に味方になってもらいましょう。
また、そのような企業は同じことを繰り返す可能性があります。後輩たちが自分と同じような目に遭わないためにも、学校側に連絡して何かしらの対策をとってもらうと良いですね。
内定辞退のまとめ記事もチェック!
内定辞退の電話連絡のやり方、内定辞退のお詫びの手紙の書き方、入社承諾書の提出後の内定辞退のやり方など、内定辞退で大事なポイントを全て網羅して、解説しました!この記事だけ読めば、内定辞退の知識は完璧です。
この記事のまとめ

- 入社日(4月1日)の2週間前までは内定を自由に辞退することができる
- 内定辞退をしたからといって、損害賠償をされることはない
- 内定式後に内定辞退をする場合は、手紙で丁寧に謝罪をしよう
たとえ内定式の後であっても、学生は自由に内定辞退をすることができます。「損害賠償を請求するぞ」などと脅されたとしても、相手にその法的な権限はありません。本当に内定辞退をしたい場合は、遠慮する必要はありません。ただし、先方には大きな迷惑をかけるので、丁寧に謝罪をし、誠意を伝えましょう。