車好きの方や機械いじりをすることが好きな方にとって、就職活動の際に要チェックな業界は、自動車業界でしょう。
就活生の中でも憧れを抱く志望者が多く、業務内容をイメージしやすいように感じる自動車業界ですが、本当に欲しい実際の業務内容や評価制度、業界の裏話などは、調べることは難しいです。
そこで今回は、実際に自動車業界で働く方にアンケートをしてみて分かった、リアルな内容をお届けします。
アンケート概要
- 調査期間:2019/5/20-2019/7/17
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:自動車業界で働いた経験のある社会人歴15年目未満の男女
自動車業界とは
自動車業界とは、トヨタ、ホンダ、日産などの企業に代表される日本経済の中心を担う業界であり、就職活動市場においても理系・文系を問わずに人気の高い業界となっています。
世界の中でも日本が非常に強みを持つ分野でもあり、またメーカーと言われればパッと思いつく業界でもあるため、就活生の中で志望しているという方も多いのではないでしょうか。
自動車業界の特徴としてあげられるのは、やはり規模の大きさです。
現存する日本企業の中で時価総額が一番高い企業は、自動車業界の1位を走るトヨタとなっていますし、追随するホンダや日産などについても、連結売り上げ高は10兆円を超えており、規格外の規模で経済活動を行なっていると言えるでしょう。
主な分野
自動車業界の中で皆さんに馴染み深いものはやはり、直接販売を行うトヨタ・ホンダ・日産などの自動車メーカーかと思います。
CMや広告などの効果も相まって、就活生の中でも「自動車業界といえば、自動車メーカーである。」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、自動車業界の中には、自動車メーカーだけでなく、自動車の部品を納品する下請け・部品専門の企業がいくつも存在します。
例えば自動車部品となるタイヤなどに関しては、ブリジストンや住友ゴム(ダンロップ)、横浜ゴム(ヨコハマタイヤ)などの企業が非常に大きなシェアを持っていますし、小さなネジなどを含めれば、多くの部品・素材メーカーが自動車業界に含まれると言って良いでしょう。
主な職種
自動車業界の中で考えられる職種や仕事内容を、実際の口コミとともに紹介します。
- 営業職
- 車の販売、メンテナンス、アフターフォロー、事故対応、保険サービス、フェア等のイベント企画、POP作成なとです。車に関することはもちろん、お客様がお困りのことは何でも対応します。(社会人歴3年目/一般社員/営業職/大手自動車メーカー)
- 生産・品質管理
- 自動車の生産に必要な各種部品の調達をしています。協力会社が製造する半製品や液晶メーカーからディスプレーなどを調達して製品生産が滞らないようにする事が私の仕事です。(社会人歴10年目/係長/生産管理/軽自動車メーカー)
自動車業界の営業職は、店舗での車の販売に加えてイベントでの説明や納車など幅広い業務内容があることが特徴となっています。
生産ラインの見直しや部品調達、部品のチェックなど自動車の生産に関わる管理を行います。
またその他にも、電気自動車やエンジンなどの新しい技術や部品を研究して開発する研究職や、自動車宣伝の企画、広告設計などを行うマーケティング職、更には経営企画職や人事職など考えられる職種はまだまだあります。
自動車業界の市況や特徴
自動車業界は、自動車という一製品を扱うとは言え、規模や影響力が非常に大きいため、経済や政治・貿易に関するニュースやトレンドに左右されやすく、時代の流れを捉えて業界に対する見方を変えることが重要となってきます。
例えば、国外の輸出を大々的に行なっているメーカーにとっては、円高の為替は(日本→海外に輸出する場合)非常に不利な環境と言えますし、逆に円安の場合は輸出による利益が大きくなるため、有利な環境となるでしょう。
自動車そのものに関するニュースや技術革新などについてもアンテナを張りつつ、経済界全体のニュースや世界の為替市場などについても意識を向けておくと、自動車業界の立ち位置を把握しやすいかと思いますので、意識してみてください。
現在の経済・為替環境
現在の円の動きとしては、2016年頃を境に円高の流れに進んでおり、積極的に輸出を進めていきたい日本自動車業界にとっては少し苦しい為替市場が続いています。
円高が進んだことによって自動車企業は、日本からの輸出ではなく海外での生産・出荷・販売という流れを確立しつつあり、積極的な生産拠点の海外移転は自動車業界の今を表す1つのトレンドでしょう。
一方で、北米自由貿易協定(NAFTA)の解消を考えているトランプ大統領の政策は、日本自動車業界に大きな打撃を与えるかもしれません。
人件費が安く、アメリカへの輸出関税がかからないメキシコには多くの日本自動車企業が進出しており、北米の生産拠点として非常に重要な位置付けとなっているからです。
世界全体の中で経済がどのような動きを見せ、自動車業界がどう対応していくのかは、これからも要チェックのニュースと言えそうです。
新型自動車・新規プレイヤーの参入
自動車業界を語る上で、新しいタイプの自動車である「電気自動車」について無視することは出来ないでしょう。
環境問題についての危機意識も高まってきており、これまで以上に自動車のCO2排出量や燃費について問われる時代となっている近年では、新しい動力源を持つ自動車に対して大きな期待が寄せられており、電気自動車も主要なものの1つとなっているのです。
日本では環境に優しい自動車に対して、税金の優遇などを使って普及を広めていこうとする政策もあり、今後も開発と普及が期待できるのではないでしょうか。
また、電気自動車の製作のために必要とされる技術は、これまでの自動車製作の技術と異なっているため、新しく電気自動車の生産を企んでいるテスラ・モーターズなどの新規プレイヤーの動向についても注目が必要です。
自動運転とIT
自動車業界のトレンドの中でも「自動運転技術」という新しい技術については、現在多くの人が注目している流れであるでしょう。
現在でもすでに自動ブレーキや、アクセルとブレーキの踏み間違え防止の技術は新車には搭載されていますが、将来的には全ての運転について自動で行われるという未来が来るかもしれません。
自動運転に関する新技術に関しては、エンジンや動力の技術だけでなくAIなどのノウハウと技術が必要であるため、DeNAなどのITベンチャー企業なども交えた研究と開発が進んできています。
法律や事故に対する責任なども含めた様々な障害をクリアして、最初の自動運転を実現させるのがどこの企業なのか、これから注目が必要と言えるでしょう。
実録!自動車業界の中の人が語るホンネ
Q1.その業界で働いてみて、入社前(その業界に入る前)とのギャップはありますか?
- 自動車業界は、土日はお休みですが、祝日は休みではないということは知りませんでした。大手だけではなく、車に関する中小企業でもこれは同じようです。(社会人歴10年目/一般社員/事務職/部品メーカー)
- 車を買いたい人に車を販売する、というイメージで入社をしましたが、実際には既に車を持っているが、まだ次の車を買う気がない人に新車を提案して買ってもらう、という営業の方が圧倒的に多いことです。(社会人歴3年目/一般社員/営業職/大手自動車メーカー)
- 毎日機械油で作業着が真っ黒になるくらい汚れるのかもしれないと思っていましたがそんなことはありませんでした。業務内容にもよりますが工場内はとても清潔に保たれています。(社会人歴10年目/係長/生産管理/軽自動車メーカー)
- 品質管理という職種なので基本的に現場で作っているものの品質向上を図るのがメインかと思っていたが、主に顧客相手の対応であったことが多く、以外とびっくりした。(社会人歴5年目/一般社員/品質管理/部品メーカー)
自動車業界の特に生産や品質管理に関する仕事は、汚れる作業が多いというイメージが持たれがちですが、実際のところ清潔に保たれているというのは意外ですね。
また休日に関する文化も、自動車業界ならではの文化なのかもしれません。
Q2.その仕事をしていて楽しい/うれしい/やりがいを感じるときはどのようなときですか?
- ミスなく仕事をすることができ、他部署からも頼まれることが増えてきた時、自分がやっていることが認められるようになったのだと、やりがいを感じます。(社会人歴10年目/一般社員/事務職/部品メーカー)
- 人生で数回しかない数百万円という大きな買い物を、わざわざ自分から買っていただけた。ということにとてもやりがいを感じます。また、その車で家族皆さんで旅行に行かれたエピソードなどを聞くと嬉しいです。(社会人歴3年目/一般社員/営業職/大手自動車メーカー)
- 自分の工場内で作っているものの不適合、不具合がなくなったことや、お客様からの苦情などが大幅に減少していくこと。不適合が減ることにより、時間当たりの生産数も増加していること。(社会人歴5年目/一般社員/品質管理/部品メーカー)
それぞれの職種ごとの特徴が出た回答が揃いました。
営業の醍醐味としては、車という高い買い物をする瞬間に立ち会えることであり、生産ラインに入る職種としては、車の質がどんどん良くなっていくことが仕事の醍醐味なのでしょう。
Q3.評価や昇進はどのように行われますか?
- ある程度年功序列であると思います。与えられた仕事をきちんとこなしているかどう、年に何回か上司のチェックが入ります。それが査定につながっています。(社会人歴10年目/一般社員/事務職/部品メーカー)
- 車の販売台数や利益、メンテナンス来客数、その他サービスの獲得数、残業時間、店舗の売り上げが評価対象です。歴は関係なく、若手でも実力次第で昇進できます。(社会人歴3年目/一般社員/営業職/大手自動車メーカー)
- 基本給は自分の年齢によって決まっており、+αについてはルールが決まっていて2種類のくらいにより決まってくる。また、上司による評価もそれに加わっており、そこの部分については特にルールは明確に決まっていない。(社会人歴5年目/一般社員/品質管理/部品メーカー)
- 勤務年数に応じて資格の取得を求められます。順調に会社の要求する資格を取得できれば社員の評価は上がり給与に反映されます。昇進に関しては年功序列です。(社会人歴10年目/係長/生産管理/軽自動車メーカー)
基本的には、年功序列と上司の評価という、他業種とそこまで変わらない回答となりました。
一方で生産ラインに入る職種では、資格などの取得が評価に繋がることもあるため、入社後の自己研鑽が大切になってきますね。
Q4.その業種にはどのような人が向いていると思いますか?
- 車が好きな営業マン。車が好きで新しく車のことを覚えていきたいと思っている人。接客が好きな人。覚えることは多いが好きなら楽しい職場ではあると思う。(社会人歴13年目/一般社員/一般事務職/中古車買取・販売メーカー)
- 車が好きで資格などの勉強もしっかり出来る人が向いていると思います。お客様相手なのでお客様の対応をしっかり出来てクレームなどにも対応できる人が向いていると思います。(社会人歴12年目/一般社員/整備士/軽自動車メーカー)
- 自動車業界であるため、工学系の知識がある人、設備、電気系統の知識がある人が特に向いているとは思うが、やはり1番はその業者に興味がある人であると考えます。(社会人歴5年目/一般社員/品質管理/部品メーカー)
営業であっても生産ラインであっても、やはり車が好きな人が活躍しやすい業界と言えるのかもしれません。
また、入社後に勉強をコツコツと続けることができる人は、評価されやすいような業界であると言えるでしょう。
Q5.あなたの働く会社はブラックだと思いますか?ホワイトだと思いますか?
- ホワイト。残業代もきちんと支払われますし、有給休暇は取りやすいと思います。(社会人歴10年目/一般社員/事務職/部品メーカー)
- ホワイト。残業しても残業はしっかりつくし、無理な残業もないのでホワイト企業だと思います。(社会人歴12年目/一般社員/整備士/軽自動車メーカー)
- ややホワイト。残業代は100パーセント支給されます。 (社会人歴10年目/係長/生産管理/軽自動車メーカー)
基本的に、ホワイトであるという声が多く聞かれました。
残業や有給休暇の取得については厳しく就業規則が守られており、安心して働くことのできる職場環境であると言えるでしょう。
Q6.あなたの働く会社や業界はパワハラはセクハラなどはありますか?
- 業界全体のことはわかりませんが、私が現在働いている会社ではパワハラやセクハラなどはないと思います。今までそういったことは聞いたことがありません。(社会人歴10年目/一般社員/事務職/部品メーカー)
- みんな仲良くしているのでパワハラなどはないです。セクハラも聞いたことがないしそういう事は会社でしっかり無いように教わっているので無いと思います。(社会人歴12年目/一般社員/整備士/軽自動車メーカー)
- 営業職にはやはりノルマがあるので、個人で決められたノルマが達成できないことがあると上司から集中的に怒鳴られることもよくあります。営業は個人戦なので、周りも助けてあげられません。(社会人歴3年目/一般社員/営業職/大手自動車メーカー)
- 上司によっては会社の飲み会で女性従業員にお酌をさせる場合があります。私の印象では50代以上のベテラン従業員にこういった傾向があるように思います。(社会人歴10年目/係長/生産管理/軽自動車メーカー)
基本的にセクハラやパワハラがある業界文化ではないようです。
一方で、職場の人間関係や年齢・性別のバランスによっても多少異なってくるため、志望企業の状況をしっかりとチェックしておくと良いかもしれません。
Q7.業界ならではの風習やタブーなどはありますか?
- 他の会社で車を購入すること。勤務終了時間が遅いため、飲み会の開始時間が22時であり、一番下っ端の社員は飲み会でも上司を乗せて最後は家まで送り届けるため飲み会ではお酒を飲めない。(社会人歴13年目/一般社員/一般事務職/中古車買取・販売メーカー)
- 飲酒運転は会社のイメージを損ないますので厳禁です。それから、他社メーカーの車で通勤する場合は駐車場が会社のゲートから遠いところに限定されます。(社会人歴10年目/係長/生産管理/軽自動車メーカー)
自社の自動車を購入して乗らなくてはいけないというものは、自動車メーカーならではの文化・悩みと言えるでしょう。
もしどこかの大手自動車メーカーへの就職を考えている場合は、自分が好きなメーカーであることが前提となるかもしれませんね。
まとめ
以上が、自動車業界に関する分野・職種・動向の紹介と、実際に働いている人たちからの本音口コミ紹介となります。
自動車という商材自体は馴染みがあるものの、実際に働いている内容はあまり知られていない自動車業界について、営業・整備士・生産管理・事務などの職種で何が行われているかが理解できたら幸いです。
自動車ならではの「他社の車に乗れない。」といった文化や、「入社後の勉強・資格獲得が評価に影響する。」といった情報は、実際に働いた人でないと分からないようなものかと思いますので、貴重な情報と自分のキャリアプランを照らし合わせながら志望業界・企業を絞り、最終的には就職する企業を決定してみてください。