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私がやったことの大半は、他人の模倣である。
サム・ウォルトン(世界最大の小売り企業、ウォルマートの創業者)
世界最高のプレゼンテーションイベントであるTED。TEDを何本も見ていると、数分で我々の世界観を変えてしまう、彼らの巧みなプレゼンテーションには、共通する5つのルールがあることに気がつきます。
何が彼らのプレゼンテーションを一流たらしめているのでしょうか?その5つの秘密を理解し、模倣し、自分のプレゼンテーションに応用すれば短期間でプレゼンテーションが上達するはずです。
TEDのプレゼンを分析してわかった、人を動かすプレゼンをするための5つのルールを紹介します。
面接は一種のパフォーマンス
面接を成功させるためには、面接を試験ではなく一種のパフォーマンスと捉える必要があります。面接は数学の筆記試験のように正解があるものではないため、その場の雰囲気を読み、機転を利かせて話題を選んでいく対応力が求められます。自分の能力や身振り手振り、話術などを使って面接官の興味を引き、「この学生はぜひうちの会社に来て欲しい」と思ってもらえるよう、パフォーマンスしていくのです。
面接の受け答えを考える際は、「どうしたら正解の答えを返せるか」ではなく、「どうしたら相手が興味を持つ答えを返せるか」を考えるようにしましょう。
自分の考えをプレゼン
面接では自己PRや志望理由、キャリアプランなど、自分の考えをプレゼンするよう求められる場面が多くあります。プレゼンにおいて最も大切なのは、「聴き手の立場に立って、聴き手に行動してもらうこと」です。もっと具体的に言うならば「面接官の気持ちになって、もっと話が聞きたいと質問してもらったり、ぜひうちに欲しいと採用してもらうこと」とも言えます。
そのためには、ただインターネットで調べたキャリアプランの例を丸々コピーしたり、暗記してきた文章をただつらつらと述べることはやめましょう。誰でも話せるような「よくある」話では、もっと聞きたいという気持ちを掻き立てられませんし、淡々と暗記した文章を述べる様子は面白みがなく、あまり興味を持てません。
相手に動いてもらうには、「その時々の状況に合わせながら、自分の言葉で語る」必要があります。
1.常識を攻撃する
プレゼンの冒頭で最も重要なのは、最初に聞き手の「知りたい」という欲求を引き起こすことです。心理学の知恵を借りれば、聞き手の知的好奇心を刺激するには、
- 興味を持っていることについて
- 自分の知っていることと違う事実
を提供するのが効果的です。常識との不適合が起こった時、私たちは「知りたい!」と思うのですね。
だから、素晴らしいTEDのプレゼンターは、私たちの「当たり前」だと思っている常識をまず揺さぶり、聴衆をプレゼンに引き込みます。
たとえば、心理学者のショーン・エイカーは「一生懸命頑張れば、成功し、幸福になる」という私たちの思い込みに揺さぶりをかけます。逆なのだ、と。彼はプレゼンの中で、「幸福になると、脳の力が引き出され、より生産的になり、成功する」という仮説を立証していきます。
あるいは、あまりにも有名なプレゼンテーションですが、ダニエル・ピンクの『やる気に関する驚きの科学』も、「報酬を増やせば、従業員は頑張り、成果があがる」という「当たり前」の常識を否定し、新しいモチベーションのあり方を示していきます。
例をあげればキリがありません。なぜなら、数えきれないほど多くのTEDプレゼンテーションが「常識への攻撃」を使っています。聞き手を話に引き込みたいなら、「相手の持っている常識を攻撃」することからはじめましょう。
あなたの面接力はどのくらい?
面接では、自己分析や業界・企業理解がどの程度できているかも、高評価を受けるために大切な要素です。今の時点で、あなたの面接力はどのくらいでしょうか?
それを知るために活用したいのが「面接力診断」です。
質問に答えることで、どのスキルが足りていないのかが一目でわかります。結果を参考にすることで、時間のない就活生も効率的に対策を進められます。無料でダウンロードできるので、気軽に試してみてくださいね。
面接においてもギャップは大切
「相手の常識を攻撃する」という点において、ギャップを使って相手の興味をひくことも大切です。
例えば、「就活生=若くて社会人経験の無い学生」というイメージを持っている面接官に対して、完璧なビジネスマナーを見せることで「意外としっかりしてるじゃないか」と思ってもらう方法があります。社会人経験の無いうちは、メール・電話の対応や面接の入退室時など、細かい部分でぎこちなさが出てしまい、「慣れていない感」が伝わってしまいます。面接官側もそんな学生を何人も見てきているため、「まあ学生だし、そうだよね」という感じで受け取っていますが、そこで完璧なビジネスマナーを見せるのです。
すると、「学生だしビジネスマナーが多少ぎこちなくても仕方ない」と思っていた面接官はギャップを感じ、「この学生はしっかりしていていいじゃないか」と思ってもらえます。
このように、相手の想像を良い意味で裏切るギャップは、面接を有利に進めるために必要なのです。
2.ファクト!ファクト!ファクト!
プレゼンの目的は相手を納得させ、相手を動かすことです。納得させるには、主張の根拠となる事実が必要です。事実がなければ、どんな賢明な主張もまやかしに過ぎないものになってしまいます。
TEDの優れたプレゼンテーションは、説得力のある事実によって、その主張を立証していきます。
たとえば、『選択の科学』の著者、シーナ・アイエンガーは、「選択肢が多いほど良い」という私たちの常識の誤りを証明するため、こんな事実を紹介します。
- 食品スーパーで24種類のジャムを売るより、6種類のジャムを売ったほうが6倍も購入率が増えた
- 一生を左右する選択であるにも関わらず、確定拠出年金(401k)のプランが多ければ多いほど、加入率は下がる(選べるファンドが2つのときは、75%が加入するが、選べるファンドが60近くあるときは、60%しか加入しない)
プレゼンテーションで最も重要なのは、自分の主張を証明する事実を集めることです。強力な事実さえあれば、相手は納得せざるを得ないからです。
重要なのは、事実です。データ、事例、エピソード・・・あなたの主張を証明するあらゆる材料をそろえてからプレゼンテーションに臨んでください。
面白いエピソードを述べられると尚興味を持ってもらえる
思わずクスッとしてしまうような面白いエピソードは、面接官に興味を持ってもらうために有効だと言えます。
ただし、「面白いエピソード」と言っても、大爆笑を誘おうと、過度に笑いを追求する必要はありません。また、自虐や人を貶めるような内容のエピソードは、かえって印象を悪くしてしまうため避けましょう。
もし、「面白いエピソードなんて、何を話せばいいのかわからない」という場合は、面接官が「へぇー、なるほど」と感心してくれるようなエピソードでも構いません。自分の趣味や得意な分野から話題を探してくると、話題も豊富で語りやすくなります。
自分の話に面接官が笑ってくれたり感心してくれると、場の空気も和み、自分自身の緊張も少しほぐすことができますので、ぜひ取り入れてみてください。
3.相手の関心に近づく
話が下手な人は、自分の興味のあることを話し、話が上手な人は、相手の興味があることを話します。もし、相手があまり関心のないテーマを話そうとするなら、「自分から相手の関心に近寄る」ことが必要です。
たとえば、イタイ・タルガムがやっているように。
イタイ・タルガムは、「オーケストラの指揮」という馴染みのないテーマを、「リーダーシップ」という私たちの興味のあるテーマによせてプレゼンを展開します。
「リーダーシップとはどうあるべきか」というテーマが、神経質なまでに細かい命令を下す指揮者、個々の創造性にまかせる指揮者・・・偉大な指揮者たちによる指揮の映像と共に語られていきます。気がつくと、全く興味のなかった指揮の世界に引き込まれているのです。
相手の関心に近づいて話せば、相手があなたの話を熱心に聞いてくれる確率はぐんと高まるでしょう。相手の興味に昇順をあわせて語りましょう。
話の切り口が大事
相手の関心に近づけるには、「話の切り口」が大切になってきます。イタイ・タルガムの例では「リーダーシップ」が話の切り口でした。「オーケストラの指揮」という話題が、切り口を変えたことで聴き手の興味を引く内容となっています。面接で自分の経験を語る時も、同じように話の切り口に気をつけましょう。
具体的に面接で有効な切り口は
- 「受動的な行動」よりも「能動的な行動」
- 「単独行動」よりも「大勢での行動」
- 「ひとつの問題のみの改善」よりも「コンセプトからの改善」
- 「サポートする立場」よりも「当事者意識を持って参加」
などがあります。
自己PRなどを考える際は、自分の経験を一通り洗い出したあと、どのような切り口で述べれば面接官の関心に近づくことができるか、今一度考えてみましょう。
印象に残したいものに焦点を当てる
自己PRや志望動機を述べる中で、「〇〇力」というようなキャッチフレーズなど、「特にここを強調したい」と思う部分を決めて、その部分に焦点を当てるように話しましょう。具体的な対策としては、一度のプレゼンの中で「何度も繰り返し伝える」ということが大切です。
「自己PRが一言で終わる」ということはほぼなく、大抵の場合、特にアピールしたいポイントと、その根拠を述べることになると思います。すると、話が長くなればなるほど、最初の方に話した内容が薄らいでしまい、あまり記憶に残らなくなっていってしまいます。そこで、特に強調したいポイントやキーワードは繰り返し述べ、面接官の記憶に残りやすくなる工夫が必要となるのです。
4.形にしよう
聴衆を惹きつける方法としては、
の順で力の差があります。目の前で、主張の証拠を、目に見える形で見せられれば、最も効果的に聴衆にメッセージを伝えることができます。
TEDのプレゼンターは決して文字だけ、言葉だけで説明しません。目に見える映像によって、実際に形にしてみせ、聴衆の脳裏にメッセージを刻みこむのです。
たとえば、デレク・シーヴァーズは社会運動が起こるさまをたった3分の動画を使って説明しています。(個人的にはもっとも好きなプレゼンテーションです)
ひとりの「バカ」が人を巻き込みリーダーになり運動を起こしていく様についての、もっともシンプルで、もっとも優れたなサマリーです。
マイケル・プリチャードは「形にする」という点では、TED史上でも最高のプレゼンテーションの1つでしょう。
浄水に下水、動物の糞・・あらゆる汚物をどんどん加えていき、「ひどい汚水」をつくり、彼の開発した携帯式の浄水ボトルにいれて、あっという間に浄水に変える。これほど説得力のあるい『ファクト』は存在しないでしょう。(4:00〜肝心の部分が始まります。)
「目に見える形」で見せることほど説得力のあるものはありません。あなたのプレゼンを見える化しましょう。
想像させ、記憶させる
もし相手の目に見えるものを用意できない場合は、「相手に情景を想像させて記憶させる」という方法も有効です。相手に情景を想像させると言っても、効果音や変なナレーションは必要ありません。例えば、苦労した内容を話している場面では少し辛そうな声色にしてみたり、転機が訪れた場面では明るい声色にしてみたりと、抑揚をつけて話すことで、聴き手はその情景を想像しやすくなります。他にも、大げさすぎない程度に身振り手振りを入れてみたり、表情を場面によって少しずつ変えたりすることも、情景を伝えやすくする良い方法でしょう。
たとえ実物が目の前になかったとしても、面接官が情景を思い浮かべてくれることで、より記憶に残りやすくすることができるのです。
5.未来に焦点をあてる
人を揺さぶり、協力を得るには、「自分のアイデアが未来をどう変えるか」を相手に理解してもらう必要があります。
TEDのプレゼンターは、ただアイデアの優位性を話すだけでなく、自分のアイデアがどんな未来を、ビジョンをつくるのかを説明し、聴衆を自分の描く未来へと巻き込み、熱狂させるのです。
たとえば、サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」は、優れたオンラインビデオ学習プログラムが世界の教育をどうやって変えるのか、私たちに具体的なビジョンを与えます。
彼はビデオによる教育プログラムの「今まで勉強できなかった人達が気軽に、最高の教育を受けられる」という優位性を示した後、プレゼンテーションを「未来へのメッセージ」で締めくくります。
このように、相手の頭の中に、具体的な「未来図」を描いてあげるのです。
もちろん、このメッセージの後、会場はスタンディング・オベーションにつつまれます。相手を納得させるだけでは人を動かすことはできません。重要なのは「良い未来」を相手にも見せてあげる事なのです。
良いインパクト、良い未来によって相手を動かしましょう。